ケシ科(Papaveraceae)
科名は"apa(粥)"に由来する古名から。有毒種が多い。
雄蕊が多く花が放射相称のケシ亜科と雄蕊が2〜4個で左右相称のエンゴサク亜科に分けられる。

  「オサバグサ属」、「ケマンソウ属」を「オサバグサ科(Petridophyllaceae)」、「ケマンソウ科 (Fumariaceae)」として独立させる立場もあるようですが、私が参考にしている目録(APGV Haston2009)ではオサバグサ属」、 「ケマンソウ属」を「ケシ科(Papaveraceae)」に含む広義の立場で分類されています。Ylistも同じ扱いです(2023.5.26現在)。


キケマン属(Corydalis)
属名はギリシャ語の"korydalis(ひばり)"に由来する。地下に塊茎をつくらない。  


ミヤマキケマン(Corydalis pallida var. tenuis) 深山黄華鬘 
小種名は"蒼白色の"、変種名は"薄い"、"細い"の意味。基準種:「Corydalis pallida」はフウロケマンです。
夏前には姿を見せなくなるのでSpring Ephemeral:春の妖精でしょうか?取りあえず「春の妖精コーナー」にも登録します。

"華鬘"は仏前を荘厳にするために仏殿の内側や欄間などにかける仏具。




ムラサキケマン(Corydalis incisa) 紫華鬘 
小種名は"鋭浅裂の"意味。白花品種には別名『ヤブケマン』を基準とした名前「シロヤブケマン」や「ユキヤブケマン」が使われています。
Spring Ephemeral:春の妖精とされています。
右の写真は色抜けが感じられますが、「シロヤブケマン」と呼ぶにはまだまだ・・・と判断しました。



(2023.4.20)


シロヤブケマン(Corydalis incisa f. pallescens) 白藪華鬘 
ムラサキケマンの白花品種ですが、花の先端に紫色が残るタイプです。品種名は"薄色の"意味。「ユキヤブケマン(incisa f. candida)」は花の先端部まで色が消えほぼ純白になります。品種名の意味も"純白の"です。
Spring Ephemeral:春の妖精とされています。



エゾエンゴサク(Corydalis fumariifolia ssp. azurea) 蝦夷延胡索 
分類区分が変更されています。亜種名は「空青色の、淡青色の」になりますが、新小種名の意味は判然としません。 私のラテン語辞典では「酒を熟成させる煙部屋、煙突」と訳しています。この解釈が正しいとすれば”長い距を煙突に見立てた”のでしょうか?

同じ単語から派生している名前に”Fumaria カラクサケマン属”があります。こちらは中性名詞”fumarium”の女性形・単数・主格です。”fumarii”は、”fumarium”の属格形だと思われます。属格は所属、所有を表しますので後半の”folia”と合わせて「fumariifolia」は「カラクサケマン属の葉の」:「カラクサケマン属の葉のような」となるのでしょうか? 

エングラー体系での小種名 "ambigua"は疑わしい"、″不確かな″の意味です。

※1   本種を扱う立場には異なるスタンスもある・・・ように聞きました。
日本で『エゾエンゴサク』と呼んでいる種に与えられている学名(Corydalis ambigua)は日本には自生していない種の学名であり、現在『エゾエンゴサク』と呼ぶ種には新しい名前が必要である。として『オトメエンゴサク』を提案しています。

※2   私が参考にしている目録(APGV Haston2009)では『エゾエンゴサク (Corydalis fumariifolia ssp. azurea)』とともに『オトメエンゴサク(Corydalis fukuharae)』の記載が既にあります。『エゾエンゴサク』と『オトメエンゴサク』、其々にアルビ品種の存在さえ記載しており、目録では双方とも国内に自生する別種の扱いです。

従来より『エゾエンゴサク』については本州自生型と北海道自生型は別種である…との見解もあり、その立場では本州自生型には『Corydalis fukuharae』=『オトメエンゴサク』を付与していたようです。

※1及び2   を前提にすると以下のような推論が成立しました。
その過程は※ 1の見解が認知されること で、学名『Corydalis ambigua』から切り離され、一時『Corydalis fukuharae』=『オトメエンゴサク』となりましたが、※ 2 の『本州自生型と北海道自生型は別種である』との見解が認知され、本州自生型に『Corydalis fukuharae』=『オトメエンゴサク』が、北海道自生型には『Corydalis fumariifolia ssp. azurea』=『エゾエンゴサク 』が付与されたものと推測します。但し※ 1※2どちらが先でも結果は同じです。同時の可能性が強 いでしょうか?
以上の経緯から当地の自生種は『エゾエンゴサク』改め『オトメエンゴサク』とします。
(2014.10.28)(2016.11.3)


オトメエンゴサク(Corydalis fukuharae) 乙女延胡索 
小種名は日本人名(フクハラさんの)だと思います。本種の分類に寄与、功績のあった女性でしょうか・・・?命名規約では
(勧告60.C.1a): 「・・・。ただし、名前が -a で追わる場合は -e (単数)又は -rum (複数)を付加するのが適当である(例えば  Triana (男性)に対して Triana-e 、Pojarkova(女性)に対して Pojarkova-e 、Orlovskaja(女性)に 対して Orlovskaja-e )。」・・・とあるのでやっぱり男性でしょうか?

ちなみにこの種が『エゾエンゴサク』と同視されていた時代には「疑わしい、不確かな」の意味を持つ"ambigua" という小種名で分類されていました。
この小種名の命名の意図とは関係ないのかもしれませんが、実際に同定の手掛かりとなる筈の苞葉が切れ込んでいたり、全縁だったりと"はっきりしない"・・・ ことは多くの図鑑が指摘しています。

Spring Ephemeral:春の妖精とされています。
和名(***延胡索)は生薬名からだが、本家中国でも"延胡索"の意味、由縁について確たる説はないようである。


『エゾエンゴサク』の長い説明を読んでください。



シロバナオトメエンゴサク(Corydalis fukuharae f. albescens) 白花乙女延胡索 
品種名は「白味がかった、やや白っぽい」の意味です。Spring Ephemeral:春の妖精とされています。

* 
目録では新称として標記に分類していますが、Ylistでは分類されておりません。(2023.5.26 閲覧)


こちらは花が一つだけ、その花が非常に大きく(長さ5cm位)別種かと思いましたが、『エンゴサク』の仲間でよいようです。『シロバナオトメエンゴサク』 の個体差とした理由は『ミチノクエンゴサク(Corydalis orthoceras)』や『ヤマエンゴサク(Corydalis lineariloba var. lineariloba)』には白花変化品の記載がないことによる消去法です。どちらかの個体差の可能性は残っています。



ミチノクエンゴサク(Corydalis orthoceras) 陸奥延胡索 
小種名が変更されています。前半部分"ortho・・・"は「真っ直ぐの、直立した」で良いかと思いますが後半部の"ceras″は「角のある」?でしょ うか??
エングラー体系での小種名"capillipes"は"細い足の"や"細い柄(茎)の"の意味です。Spring Ephemeral:春の妖精とされています。



ヤマエンゴサク(Corydalis lineariloba var. lineariloba) 山延胡索 
小種名は"線形に浅裂した"の意味。Spring Ephemeral:春の妖精とされています。

『ヤマエンゴサク』と判断していた写真は削除しました。或るプロの人から『ヤマエンゴサクを確認のため他県まで出掛けたが、苞葉が大きく切れ込み、当地で見られる種とは明らかに相違がある。 当地では未だに確認できていない。』 との言によります。

多くの図鑑やネット解説ページでは、本種の同定ポイント(外観上の特徴)として「下唇弁の切れ込み」、「苞葉の派手な切れ込み」を指摘しています。「小葉云々」については変化 が大きい・・・と書き捨てています。

『エンゴサク』の仲間は同定ポイントとなる部分でさえ個体差が大きいことも多くの図鑑等が指摘しています。他の特徴から判断したのでしょうが、ネット上の写真では私が以前掲載していた写真程度の「下唇弁の切れ込み」、「苞葉の地味な切れ込み」の個体に対しても『ヤマエンゴサク』と紹介しているページもあります。

 地元の植物誌では「弥彦の植物(伊藤至 S56年)」に観察報告がありますが、それ以降の観察報告は見当たりません。
(2020.2.10)


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