モクセイ科(Oleaceae)
科名はオリーブ属名(Olea 意味不詳)を科名化したようです。  
参考目録( APGV Haston2009 に準拠)ではクマツヅラ科(Verbenaceae)の一 部を吸収しています。
 エングラー体系ではモクセイ目 (Oleales)として一目一科でしたがAPG体系ではシソ目(Lamiales)に編入されました。


トネリコ属(Fraxinus)
属名はセイヨウトネリコの古代ローマ時代の古ラテン名です。


アオダモ(Fraxinus langerinosa f. serrata) 青梻
小種名は「綿毛のある、軟毛のある」で、品種名は「鋸歯のある」になります。

「アオ・・・」の由来についてはいくつかの説があります。そのうちで興味を引くのは
 1・雨上がりに樹皮が緑青色になる。
 2・枝を切って水に浸けると水が青い蛍光色になる
 3・高級感を出すために黒墨に加えて"青墨を作るための着色剤"に利用された。
 4・青い染料として利用された。

このうち一番よく引用されるのが ”2・枝を切って水に浸けると水が青い蛍光色になる ”でしょうか?しかしこの現象、或る実験結果によると明るい場所では背景に白い 紙などを置かないと確認できないほど僅かな変化のようである。 実験者は「紫外線をあてる』ことで水が鮮やかな青色の蛍光色を発することを確認している。その実験の写真を見る限り非常にきれいな「青」です。・・・名前 の由来には関係しない現象でしょうが・・・。
(2017.7.4)
 参考目録では「Fraxinus langerinosa アオダモ(広義)」として、種内で品種分類しています。

 「梻 」は「マツブサ科シキミ属シキミ」のことです。葉や樹皮が抹香や線香の材料となります。が、葉や花も含め樹木全体が毒成分を含み、特に種子は食べると死亡 の危険性があり、「シキミの実」は植物としては唯一「毒物及び劇物取締法」で"劇物に指定されています。 

「梻 」は"仏前に供える木"の意味の和製漢字です。本種に何故この文字が使われているのか理由は分りません。
(2016.11.10)
(2017.5.4)
(2015.7.8)


マルバアオダモ(Fraxinus sieboldiana) 丸葉青梻
小種名は「シーボルト」。和名:標準名からは「アオダモ」の変化品を連想しますが別種となります。

"タモ"や"タゴ"は"トネリコ"のことで、そこに"青(アオ)"の形容詞が付き、さらに葉の特徴を表す"マルバ"が付いています。が、写真のように特に 葉に丸みはありません。また「ホソバアオダモ」のように相反するような意味合いを連想させる別名もあります。この"マルバ"は他のトネリコの仲間と違い”葉 に鋸歯がない”ことを意味しています。


sieboldiana
フィリップ・フランツ・バルタザール・
フォン・シーボルト
Philipp Franz Balthasar von Siebold
1796・2・17 - 1866・10・18
   ドイツの医師・博物学者。出島の三学者の一人。標準ドイツ語での発音は「ズィーボルト」だが、日本では「シーボルト」で知ら れている。

江戸後期にオランダ東インド会社の日本商館付医員として来日したドイツ人医師。南ドイツのビュルツブルクに生まれる。
大学卒業後,1823年ジャワに渡り,同年(文政6)長崎に来航。出島の商館勤務のかたわら,許可を得て長崎郊外鳴滝に学塾兼診療所(鳴滝塾)を開設し た。吉雄権之助(吉雄耕牛の子 ツンベルクの項参照)らオランダ通詞をはじめ,(美馬順三,高野長英,伊東玄朴,高良斎ら)多数の日本人を蘭学者として育 成,門人たちに課題を与えてオランダ語による論文を提出させた。1825年には出島に植物園を作り、日本を退去するまでに1400種以上の植物を栽培し た。また、日本茶の種子をジャワに送ったことにより同島で茶栽培が始まった。

最も重要なのは,ヨーロッパに彼によって紹介された日本の風物である。通称『日本』もしくは『日本誌』すなわち『日本とその周辺諸地域(蝦夷,南千島,樺 太,朝鮮,琉球)についての記述集成』としてライデンで1832年から54年までかかって刊行されたもので,日本についての浩翰で巨大な総合的研究書であ る。


下段の写真3枚は結実し既に種子となった状態です。

(2015.6.7 上段3枚)(2015.7.8 下段左・中)(2016.11.10 下段右)


ヤマトアオダモ(Fraxinus longicuspis var. longicuspis) 大和青梻
小種名は"longi(長い)"+"cuspis(棘、槍)"の意味になります。小葉の先端が細長く伸びる様子・・・でしょうか?「大和・・・」は本種が 日本の固有種であることから・・・?
和名:標準名からは「アオダモ」の変化品を連想しますが別種となります。雌雄異株ですが雄株は雄花だけ、雌花は両性花を着けます。近くに雄株のいない雌株は自家受粉で種の保存を全うするのでしょうか?


写真の上段:雄株と雄花:開花前と開花後 中段:雌株と雌花(両性花) 下段右:果実 中央・右:葉
(2017.4.30)(2021.4.23右端)
(2019.5.5)
(2017.6.4)


トネリコ(Fraxinus japonica) 梣
別名は"タモ"や"サトトネリコ"です。”トネリコ”の発音は”お経を筆写するときに、この木の皮を濃く煮て,膠のように練って使ったので、「共錬濃(ともねりこ)」からと推定する意見もあります。
漢字表記の「岑(シン)」は"音"を借りたもの。想像するに「トネリコ」の樹皮を漢方で"秦皮(シンピ)"と言うこ と に由縁するのではないでしょうか?秦皮(シンピ)は眼病や通風に効果があるとされている。


トネリコの仲間は材質が堅く野球のバットの良質な材料とされるなど利用範囲が多様なことからでしょうか各地で多様な呼び名があります。
当地では刈った稲を乾燥させる「稲架木(ハザキ)」として利用されていました。が、農作業の変化で邪魔者扱いされ多くが伐採され一部地域で「ハザ並木」が保存されている状態です。所々で長年手入れされず野生の状態近くまで戻っている個体が単発的に見られます。

別名「白蝋樹」が暗示するように、樹皮から蝋が採れます。子供の頃、採集した蝋を売って小遣いにした覚えがあります。この”白蝋を動きの悪くなった敷居に塗って滑りをよくする”ことに利用したことから「戸に塗る粉(トニヌルコナ)」から変化した名前・・・と解する説もあります。
また、この木の皮を煮た膠を混ぜて磨った墨が濃くネットリとすることから「共に錬る濃(トモニネルコイ・・・共に錬ると濃くなり粘り気が増す・・・の意?)」が由来とする見解もあります。


(2015.5.20)(2015.7.8)

果実周辺の葉が色づいている。「セイヨウトネリコ(Fraxinus excelsior)」は紅葉(黄葉)はせず緑のまま落葉するようだが、本種はこのあと黄葉に進んだ。
(2022.1016)

紅葉(黄葉)から落葉の変化

2022.10.30 紅葉の最盛期・まだ落葉は始まっていない。

2022.11.7 落葉が始まり、頂部が薄くなり始めている。

2022.12.3 残っている葉は僅か、枝にあるのはほとんどが種子。

2022.12.31 葉はなくなったが、枝にはまだ種子が残っている。
(20231.1)

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